駅に向かう地下街の雑踏の中。
人の群れを縫うように歩き、
その日も、
誰の顔も見ることのなく、
ただ無意味なすれ違いを
繰り返すだけのはずだったのに、
ふと、
前からこちらに向かって歩いてくる
彼等が目についたのは、
その二人が余りにも
互いに似ていたせいでしょうか?
年齢は、20歳そこそこ。
ワックスのついてない感じの
ぽさぽさっとした無造作な髪。
銀縁のメガネ。
わずかに色の違うグレーのパーカーに、
同じく、
わずかに色の違うジーンズ。
黒いリュック。
《……ああ。
黒豹みたいなスカウトの男の子たちとは、
別の世界にいる若者なんだな》
なんて思いつつ歩いて、
いざ彼等とすれ違う瞬間、
片方のパーカーくんが、
もう片方のパーカーくんに諭す?声が、
聞こえました。
「お前さあ、
好きになるからフラれるねん」
「好きにならんかったらええねん」
《…………え?》
ちょっとびっくりしました。
「肉食」でもなく、「草食」ですらなく、
「断食男子」ですね。
確かにフラれることはないでしょう。
…………。
「どんどん恋愛しなきゃダメよ」
そんな事は、
全く思ってないんです。
寧ろ、
「恋しなきゃ!」
そんな前置きがあるのって、
違和感を感じちゃうし、
好きになる時は、
自分にとって「都合の悪い相手」でも、
先行きがどうであれ、
好きになっちゃうもんじゃないですか。
大人になればなるほど、
初めから叶わない想いの方が
多いんですけどね。
貴方が最後に恋をしたのは、
いつですか?
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本日の合言葉
「パーカー」